thingamabob

ただの雑記です。

予想していなかった「ありがとう」の言葉

先週の木曜日、早めに仕事を終えて鎌倉へ散歩に出かけた。

 

紫陽花はもう散り際で、花びらが少しくたびれているような気がした。

それでも、自然の美しさは仕事で疲れた心を癒すようで、紫陽花をみるたびに心が和む。

 

 

いつもより人通りが少ない小町通りは、大学生くらいのカップルが身を寄せ合って歩いていて、小雨の中その風景をカメラにおさめてのんびりと過ごした。

 

 

鎌倉八幡宮でお参りをして、参拝客の絵馬をみて、階段を登ったところから見える鎌倉のまちを眺めたあと、午後18時、JRの鎌倉駅を出て、家へ帰った。

 

 

最寄駅に着いて線路を渡ったところに、一匹の三毛猫がちょこんと道端に座っていた。

 

か細い声で「ニャア」と声をかけてきて、おそるおそる手を伸ばしてみたら、私が触れることを許してくれた。

撫でると骨張っていて、痩せているようで少し心配な気持ちになっていたところに、目の前の寂れた不動産から70代くらいと思しきおばあさんが降りてきた。

 

 

 

「あら、お姉さんに可愛がってもらってよかったわね」と優しい声で呟くと

 

「さ、そろそろお店をしめるわね」と、誰に言うでもなく、不自由そうな足取りでお店の中に再び入っていった。

 

すると、三毛猫が、するっとお店の中に入ると同時に「もう入るの?」とおばあさんが三毛猫に問いかける。

 

 

どうやら、この三毛猫の飼い主らしい。

 

ちゃんとご飯をくれる人がいたんだ。よかった。と、さっきの心配がなくなって私も帰ろうとした瞬間

 

 

「ありがとうね。」

 

 

と、おばあさんが私に言った。

 

 

感謝の言葉がくる予想をしていなかった私は、「あ、はい」と少し戸惑いながら、同時に心がすごく温かくなった。

 

 

 

 

今まで、何かをして、それに対するお礼は受け取ってきた。

それは予想された「ありがとう」の言葉だった。

 

 

けど、その日の「ありがとう」は予想していない言葉だった。

 

 

 

鎌倉の紫陽花で癒されていたところに、温かい言葉。

 

なんだか心が充実した瞬間だった。